元消防職員です。
在職時もよく言われることが有りましたが
救急車ってなんであんなに遅いの?
という疑問。
現職の方がその理由をあれこれ説明しても、言い訳にしか聞こえないような気もするので、実際はこういう理由で遅い場合があるんです、という話をします。
ご理解とご協力をお願いしマス。
大きく分けて3つ。救急車が遅いのはなぜか。
「救急車ってなんであんなに遅いんだ」
という話をすると、人によって色んな捉え方有るかと思います。
- 来るまでが遅い
- 病院に向かうまでが遅い
- サイレンを鳴らしているのにスピードが遅い
のいずれかだと思います。
- 1,2→救急車を呼んだ人、家族関係者など
- 3→車を運転している方
と一言に、「救急車が遅い」、と言ってもそれぞれの立場で考えることが違ってくるはずなんですね。
もちろん、のんびりしているわけではないですし、救急隊も一生懸命活動しています。
とは言え、どんなときでも速さ重視で活動できるかというとそうではありません。
以下、3つの遅い理由について、ざっくり紹介します。
救急車の到着が遅い理由
まず1つ目。
救急車を呼んだのに到着するのが遅いという場合。
そもそも、自宅から救急車のある消防署までの距離が遠い場合はそれなりに時間がかかります。
なので、その辺を理解されている方は、むしろ遅くても仕方ない、と感じていると思います。
※1 ちなみに、救急車の配備の基準については、消防力の整備指針 – 総務省消防庁という告示の中で決まっていて、人口2万人ごとに1台(総人口10万以下の場合)など、人口に対して何台、という感じで決まっています。なので、何キロ以内に1台など距離的な決まりはないです。詳しく知りたい方は、第十三条~救急自動車当たりを御覧ください。
救急車の到着が遅いと感じる方は、
比較的近い場所に消防署があるのに、なんでこんなに遅いんだ!
というケースかと。
理由は一つではないですが考えられる理由について箇条書きにしてみると
- 一番近い消防署の救急車が他の現場に出ていて、別の消防署から向かっている場合
- 救急車が他の現場に出て引き上げている途中の場合
- 救急出動以外の出向業務で消防署にいない場合
これが全てではありませんが、それぞれ遅い理由があります。
ゆっくり準備しているから、という理由は有りえません。
消防署で待機中に指令が入ると、概ね1分程度でサイレンを鳴らし出動しています。
(↑この時間もすべて記録することになっています。。)
これらの時間経過なども含め、1年の統計資料は消防白書という資料で毎年公表されています。
ちなみに、現場到着までの全国平均は、平成30年では8.6分です。
あくまで平均時間です。
それから、やはり待つ側、しかも目の前で具合の悪い人がいるとなると、1分が数10分くらいに感じることもありますので、気持ちも関係していますね。
自分も在職時呼んだことがあり、しばらく待ったような気がしましたが、実際には電話してから5分位で来てくれました^^;
ざっくりまとめると・・
救急車到着までが遅いのは相応の理由があり、到着するまでは最短で到着できるよう努力している。また、救急車を待つ側の心理状態も関係。
という感じです。
だからと言って、仕方ないという話ではなく、到着までが遅い理由がある、という話でした。
救急車が病院に向かうまで遅い理由
続いて、救急車の中に収容したのになかなか出発しない、という場合。
ざっくりと、救急車内(現場で済む場合も有)で行っている活動についてまとめると・・
- 住所、名前などの基本情報の聴取
- かかりつけ、持病などの病院に関する情報の聴取
- 脈拍、血圧などの測定
この辺までができた段階で、対応可能な病院に電話します。
とりあえず電話しちゃだめなの?と思われるかもしれませんが、病院側でも救急車が到着するまでにカルテを準備するとか、必要な資材を準備するなどの理由があるので、病院で必要とする情報がまとまり次第連絡することがほとんどです。
その後、病院が決まればそのまま出発できます。
が、テレビなどでもたまに聞く、病院のたらい回し問題。
要は、受け入れできません、と病院側から拒否された場合さらに別の病院へ連絡します。
病院へ電話すると、
受付が電話を取る(住所生年月日を聞かれることも)
↓
担当の看護師に代わります。お待ち下さい。
↓
先生に確認します。お待ち下さい。
こんな感じの流れです。
拒否された場合、別の病院でも概ね同じような流れで保留音が流れます。。
これが受け入れてくれる病院が決まるまで繰り返されることになります。。
となると、必然的に時間がかかることもご理解いただけるかと思います。
実際に11の医療機関に問い合わせたこともあります。
この問題については、じゃあ誰が悪いんだという話になっても、誰も悪く無いんですよね。
言ってみれば世の中の問題なので。
実際にあったケースでは、出発しないことに腹を立てた家族の方が、突然救急車のハッチを開けて無理矢理患者さんをおろそうとしたことも有ったりしました。。
もちろん、その都度救急隊からの説明は有るかと思いますが、待つ側としては時間が長く感じてしまいますよね。
救急車のスピードが遅い理由
おそらく多くの人が感じる、
サイレン鳴らしているのに遅い
という場合。
救急車が一般道で、サイレンを鳴らしながら走る時の最高速度は80キロです。
ただ、ずーっと80キロで走れるかというともちろんそうではありません。
路面状況もありますし、カーブ、赤信号では減速もします。
以前こんなTweetが話題になりました。
これ、ほんとにお願いします。 滅茶苦茶遅い救急車がいたとしたら、それは最大級に命の危険がある方を搬送中です。
救急車に無理なブレーキや逆に車間を狭く追従する事は避けてください。
救急車の運転手はその瞬間、お尻に汗を掻きながら路面の凸凹、全方面の車の動きを見ています。
よろしくです。
これ。
なんにもない真っ直ぐな道路なのに遅い場合のほとんどが、搬送している患者さんの様態です。
このTweetでは、くも膜下出血です。
他には、
骨折していて振動があるたび痛みが走る方
とか
車内で注射をする場合
とか状況によって色んな理由があります。
自分が運転していた時代には
「揺らすな!!」
と怒鳴られたことも有りました^^;
救急隊の役目は病院に搬送することもそうですが、「苦痛の軽減」っていうのもあります。
揺れるたびに「痛い!」って言われたら、とにかくゆっくり振動を拾わないように走る必要があります。
逆に、先程のTweetのリプライにもありますが、急ぐ場合もあります。
救急車が病院まで1秒でも早く着かなきゃいけない病気もあります。 喘息劇症発作や緊張性気胸、心筋梗塞、致死的不整脈、ハチ刺され等からくるアナフィラキシーショック等々、まだありますがこう言った時は凄く攻撃的な運転になってしまいます
とにかく1秒でも早く医療機関につくことが必要な場合は急ぎます。
なので、サイレンを鳴らしている救急車が遅い場面に遭遇することもありますが、遅く走らなければ行けない理由が有るんです。
ご理解ご協力お願いしマス。
救急車よもやま話
余談です。
昔の救急車は、救急隊も二人でいい場合があって、いわゆる「運び屋」のような時代も有りました。
それから、救急救命士制度ができ、高規格救急車なるものになりました。
この頃の救急車は、実は○イエースに4000ccの○ルシオのエンジンを積んでいました^^;
もう時効の話ですが、納車されたばかりの救急車のパワーを確認しようと、アクセル踏み込んだら車内の荷物が全部後ろに吹っ飛んで行きました笑
それだけのパワーが有ったので、救急車を運転する人の中にはとにかく飛ばした方も多く、事故も多かったんですよね。
それも有ってか、今では2㍑クラスエンジンの救急車が主体です。
今後どう変わっていくんでしょうねぇ。。
ありがとうございました。